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ゲノム医療用語解説

ア行

遺伝子多型

DNAの塩基配列で表される遺伝情報の一部が同じ種が属する集団の個体(個人)間で違いがあることを指す。塩基配列の個体差という点では遺伝子変異と同じだが、一般にその集団全体の1%以上の頻度で存在すると「多型」と呼ばれ、頻度が非常に低い場合には「変異」と呼ばれる。病気にかかわるような塩基配列の違いの場合は、1%以上でも「変異」と呼ばれることもある。比較的、頻度の高い多型のような塩基配列の違いには、体への影響がないと考えられているものが多く、一部の違いが個体(個人)の見た目や、体質などに影響する。一方で、病気へのかかりやすさや、重症度、薬剤の効果や副作用の出やすさなどに関与している可能性も考えられている。
遺伝子多型の中で、特に1つの塩基が他の塩基に変わっていることを一塩基多型(SNP)と呼ぶ。

遺伝子

遺伝によって親から次の世代に受け継がれる形質(顔、皮膚や目の色など)を決定づけるいわば生物の設計図となるものが遺伝子である。遺伝子は、DNAの塩基配列(DNA配列)情報という形で生物のゲノムを構成するDNA分子の一部として存在している。遺伝子を構成するDNA配列情報は、タンパク質を形作るアミノ酸の配列情報に変換されて、体を構成するタンパク質を作るための設計図として使われる。

オッズ比

ある事象の起こりやすさ(たとえばある疾患へのなりやすさ)を2つの群で比較して示したもの。オッズ比が1より大きい場合はその事象は起こりやすく、1より低い場合は起きにくいことを示す。たとえば、ある集団での高血圧の人のグループと正常血圧の人のグループを比べるとする。どちらのグループからも心疾患の発症者は現れていたとしても、オッズ比が1以上であれば、高血圧グループの方が心疾患を起こしやすいと解釈できる。

遺伝率

遺伝要因と環境要因(食生活、運動習慣など)がかかわる形質において、遺伝要因で説明できる割合を指す。血液型のように遺伝率がほぼ100%の形質もあるが、体格や病気のなりやすさなど、多くの形質では、遺伝要因と環境要因の両方があり、遺伝要因にかかわる遺伝子は多数ある場合が多い。

遺伝的リスクスコア(GRS)

ゲノム上の遺伝的バリアントの影響を足し合わせたスコアのこと。疾患のなりやすさの推定値。GRSはGgenetic Rrisk Sscoreの略。

遺伝子発現

遺伝子からタンパク質が作られること。

遺伝因子(遺伝的因子)

個人の外見や行動、疾患の発症などに関わる因子のうちDNAに書き込まれた遺伝情報によるもの。対比する言葉は環境因子(運動習慣や喫煙、飲酒など)。遺伝因子は生まれつきもった体質のようなもので、親から子へと遺伝し、血縁者同士では共有していることもある。

遺伝子座 / 遺伝的座位

遺伝子座は、ある遺伝子が存在している染色体上の場所のこと。たとえば、ABO式血液型を決める遺伝子は、A型の人もB型の人も9番染色体の端近くにある。この位置をABO血液型遺伝子の遺伝子座と呼ぶ。タンパク質をつくる遺伝子ではなくても、体質にかかわるDNA領域が近年知られるようになり、日本語では遺伝的座位と呼んでいる(英語ではどちらも同じ)。

一塩基多型(SNP)

単一塩基多型ともいう。SNP(スニップと発音)はSingle Nucleotide Polymorphismの略。髪の色の違いや血液型の違いなどは遺伝的に決まっている個人差といえる。生物の設計図であるゲノムには個体ごとに違いがあり、例えばヒトでは個人間で99.5 %以上は同一であるが、残りの部分では違いがある。SNPは、こうした遺伝的な個人差をもたらすDNA配列の違いの1種で、たった1つの塩基がほかのものになっている状態。ヒトゲノムの全域に分布しており、ほとんどの場合は、何の影響もないが、ときに疾患のリスクを高めたりすることがある。集団内での遺伝的特性を調べるGWASの際にはおもにSNPを対象とした解析が行われる。

アレル(対立遺伝子)/ リスクアレル

私たち哺乳類をふくめ多くの生き物は両親のそれぞれから染色体を1組ずつ受け継ぐ。このため、個々の遺伝子は父由来と母由来の2つがある。この1対の遺伝子セットを対立遺伝子またはアレルと呼ぶ。また、特定の疾患や条件に関連する対立遺伝子をリスクアレルと呼ぶ。

カ行

形質

その人の持つ性質や特徴のこと。身長などの身体的な特徴や能力、病気のなりやすさなどが含まれる。

ゲノムワイド関連解析(GWAS)

Genome-Wide Association Study
ゲノムの全領域に散在するDNAレベルの個人差(変異、多型、バリアントなどと呼ぶ)と疾患発症リスクなどといった形質との因果関連を網羅的に検討する遺伝統計解析手法。多くのGWAS研究では、DNAレベルの個人差の中でもSNPを対象にしている。単一遺伝子による希少な遺伝性疾患ではなく、高血圧や糖尿病といった多くの遺伝因子(と環境因子)がかかわる疾患の解析に用いられる。これまでに、数百を超える形質や病気を対象に実施され、数多くの関連遺伝子が同定されている。

ゲノム

ゲノムはその生物が親から引き継いだすべての遺伝情報のこと。長い紐状の分子であるDNA(デオキシリボ核酸)という物質に4種類の塩基(A、T、G、C)の並び方(配列)として情報が記録されている。個々の遺伝子はもちろん、その遺伝子の発現量を調節するための情報もDNAにある。ゲノムの情報には、生物の形質や機能、発現される遺伝子、および遺伝的変異などが含まれる。

ゲノムの情報は、現代の分子生物学やゲノム医学の分野で重要な役割を果たしており、個人の遺伝的特性や疾患のなりやすさなどのほか、祖先のルーツの理解などに貢献している。技術の進歩により、ゲノムの情報は高度に解析され、個別の生物や種に関する深い洞察を提供することが可能になっている。

個別化医療

その人のゲノムを調べることにより、ひとりひとりの体質によって、特定の病気へのかかりやすさや、適切な投薬を実現する医療。

サ行

自然選択

特定の環境の中で、生存や繁殖に有利な性質を持つ最も適応力の高い個体が生存し、繁殖していく過程のことで、ダーウインが唱えた説。

次世代シーケンサー

超高速シーケンサーとも呼ばれる。従来のDNA配列決定に用いられていたサンガー法とは原理的に異なる方法で、大量のDNAの塩基配列を解読することができる装置である。1台の装置で一度に5億から1000億塩基の解読を行なうことができる。

精密化医療

その人のゲノムに基づいた遺伝要因を考慮し、同じ疾患であっても個々人の病態やリスクに応じた層別化を行うことで、それぞれの患者に最適化した医療のこと。ゲノム医療、パーソナル医療、テーラーメード医療などともいう。

疾患感受性遺伝子

単一遺伝子病の原因遺伝子のように、その遺伝子に変異があると必ず発症するというものではなく、変異があると発症しやすくなったり、逆に発症しにくくなったりする遺伝子を指す。リスク遺伝子ともいう。ほかの遺伝子との組み合わせや環境要因などと合わさって発症につながることが多いので、この遺伝子があるからといってその対象疾患に発症するわけではなく、逆にない人でも発症することはある。

全ゲノムシーケンス(WGS)

略号はWGS(Whole Genome Sequence)。対象とする生物種や個体のゲノムをすべて解読する手法。20世紀のころは、技術的な困難さや費用面などから、注目する遺伝子だけを解析する研究がおもだったが、近年、技術的な条件が整ってコストも下がり、ゲノム全体を読んで、包括的に研究することが現実的になっている。
WGSは、個々人の遺伝的な特性やバリアントの存在を包括的に理解するのに役立つ。わかることとしては、その人のルーツ、疾患に対する感受性、薬の効きやすさなどが含まれる。WGSは遺伝学的研究、疾患の原因解明などの基礎研究だけでなく、先進的なゲノム医療などの分野でも広く使用されている。

タ行

対照群

対照群とは生き物を対象にした研究で、比較対照のために設けるグループのこと。たとえば薬の効果を確かめる実験であれば、薬を使うグループと使わないグループを設け、後者が対照群となる。このサイトでおもに扱う「症例対照研究」では、研究の対象とする病気にかかったことのない集団を対照群とする。症例対照研究は、病気の原因をさかのぼって調べる研究方法で、調べたい病気にかかっている集団とその病気にかかったことのない集団の特性 を比較することによって、病気と関連する要因を探す。調べたい病気にかかっている集団は、症例群と呼ばれる。

BBJは患者を対象としたバイオバンクのため、BBJの研究協力者のみで症例対照研究を行う場合は、研究対象の病気で登録されている研究協力者の集団を症例群、その病気の登録がなく、 かつかかったことがない研究協力者の集団を対照群として、病気に関係する遺伝的な要因などについて検討される。研究によっては、症例群をBBJの研究協力者から選び、対照群を他のコホート研究などに参加している健康な人から選ぶことがある。

トランスクリプトーム解析

細胞や組織における遺伝子の発現パターンを詳細に調べるための解析手法。遺伝子の発現は、DNAからRNAへの転写(トランスクリプション)を通じて行われる。トランスクリプトーム解析は、このRNAの種類、量を網羅的に調べ、生物の身体のなかで、いつ・どこで・どういった条件下でどの遺伝子をどれだけ発現しているのかを理解するのに役立つ。これにより、疾患のメカニズムの解明や新しい治療法の開発など、様々な研究が進められている。
実際のトランスクリプトーム解析には、次世代シーケンシング技術が使われることが一般的。

転写因子

遺伝子の発現を調節するタンパク質。DNA上に存在する遺伝子の発現を制御する領域(プロモーター、エンハンサー、サイレンサーなど)に結合し、その遺伝子のDNA情報を鋳型としてをRNAに転写するタイミングや量を調節する。

DNAマイクロアレイ

試料にどんなmRNAやDNAが含まれているかを網羅的に調べることができるツール。遺伝的多型(主に一塩基多型)を検出するための分析器具。ガラスや樹脂の基板の上にDNAの断片(部分配列)がシステマチックに高密度に配置・固定されていて、試料中に相補的なmRNAやDNAがあればこれと結合するので検出できる。DNAチップとも呼ぶ。とくに遺伝的多型(主に一塩基多型)を検出するためのものはSNPアレイとも呼ぶ。一度に、数十万から数百万の遺伝的多型の検出が可能である。

多因子疾患

多数の遺伝子が作用関与し、さらに食生活や運動習慣といった生活習慣などの環境要因が加わって起こる疾患。高血圧や糖尿病、一般的なのがんなど、いわゆる生活習慣病と呼ばれる病気が代表的な例。

ナ行

ハ行

BMI(ビーエムアイ)

体格指数などともいう。肥満・やせの程度を示す指標。「BMI=体重(kg)/身長(m)2」の計算式に基づき体重と身長の関係から算出される。値が大きいほど肥満の傾向にあることを意味する。BMIが22のときに統計的にもっとも病気が少ないことからBMI22を適正とし、日本人では18.5以上25未満を普通体重としている(日本肥満学会の2022年ガイドライン)。BMIはbody mass indexの略。

ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)

ゲノムワイド関連解析などで、疾患との関連が示唆されたゲノム上での個人差について、疾患へのリスクを高める病的バリアントがもたらす推定効果量と、各個人が持つ病的バリアントの数の積をすべて足し合わせて得られる数値。個人ごとに算出され、このスコアに基づいて、さまざまな疾患における遺伝的な発症リスクの高低を定量的に評価できる。ポリジェニック・スコア(PS)ともいう。

バリアント

ヒトが持つ約30億塩基対のゲノム配列のうち、個々人での配列の違いをバリアントと呼ぶ(変化、変異、多型などともいう)。バリアントは、その持ち主の生存にとって有利にも不利にも働かないが、疾患の発症リスクを高めることもある。そうしたものをとくに、病的バリアントと呼ぶ。高リスク多型ともいう。

病的バリアント

バリアントの用語解説を参照。その持ち主の生存にとって有利にも不利にも働かないが、疾患の発症リスクを高めることもある。そうしたものをとくに、病的バリアントと呼ぶ。高リスク多型ともいう。

マ行

メタ解析(メタアナリシス)

同じ研究テーマを扱った複数の研究結果を統合して解析を行う統計学的手法の一つ。サンプルサイズを大きくできることが最大のメリットで、単一の研究では検出できなかった関連を見つけられる一方、真でない関連を除くことも可能になる。ただし、統合しようとするもとの研究どうしで統計学的な異質性が高い場合(ある研究では相関が大きい、別の研究では相関はないなど)、メタ解析の結果の解釈には注意が必要。

ヤ行

ラ行

ワ行